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公園のクリスマスツリーの明かりがキラキラと輝いている。
とてもきれいだった。
その輝きに包まれて歩くカップルたちがとても眩しかった。
僕は「はあ」と息を吐いた。
口から吐き出される白い空気が、空に向かって伸びていく。
寒さはさらに増していた。
彼女は来るだろうか。
いつものように、いつもの笑顔でやってくるだろうか。
自信はなかった。
「誰か待ってるの?」
ふと、声がした。
振り向くとベンチに一人の女性が座っていた。
白いコートを着た若い女性だった。
僕と同い年くらいの、妙に落ち着いた感じの女性だ。
「え、ええ。まあ」
僕は答えた。
「そう」
女性はそう言ってほほ笑んだ。
不思議なことに、彼女のまわりに雪は降り積もっていなかった。
雪の方が彼女を避けているかのように見えた。
僕はそんな不思議さよりも、彼女の柔和な表情に気持ちが落ち着いていくのを感じた。
だからだろうか、なぜか無性にその女性の隣に座りたくなった。
「いいよ」
彼女はそんな僕の気持ちを察したのか、サッとベンチから腰をずらした。
僕は何も言わず彼女の隣に腰をかける。
ふわっと花の香りがした気がした。
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