ホームランは打てない

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 普段はおちゃらけていることが多いが、雫は真面目でしっかり者だし、若い女性特有の浮ついた雰囲気もない。案外、付き合うのなら年上の方が合っているのかもしれないと、善は無理やり納得しようとしていた。 「会計閊えてるみたいだから、僕たちは出ようか」 「あ、そうだね。じゃあ」  男性はそういって、スマートに雫をエスコートすると、店を出て行った。 「雫ちゃんにもとうとう彼氏できたかー」  などと言っている楓太に、俺も外で待ってると告げて、善も店の外に出た。ちょうど、雫と彼氏がタクシーに乗り込むのが見えた。  夜は一段と冷える。暖冬だと言われても、寒いものは寒い。冷たい夜風が、火照った体から熱を奪っていくようだった。しんとした夜空を見上げる。  別れた後、善が他の女性と付き合い始めたとき、雫もこんな気持ちだったのかと思うと、今になって罪悪感が膨らんだ。  彼女の中で、自分は完全に “過去の人” になったんだなと善は痛感した。  恋人と一緒にいるところに出くわすなんて、誰かにもう諦めろと言われているような気がした。  好きな人が幸せならそれでいいじゃないか。  聖人君子のように、素直に祝福できたらどんなにいいだろうと思った。
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