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「じゃあ、朝になったら病院行くね。ありがとう」
「その傷は、今すぐ夜間救急に飛び込んだ方がええレベルちゃうかな」
「そんなにひどいの? 自分じゃ見えないからさ、ちょっとスマホで撮ってくれない?」
言いながら、彼女はポケットをごそごそし始めた。
「あれ、スマホないな。落としたのかな」
「スマホは持って出たん?」
「どうだろ。憶えてないや」
「さっきから、なんも憶えてへんやん。もしかして、宇宙人にアブダクションされたんちゃうん」
仕方がないので、善は雫の頭部を自分のスマホで撮影した。撮った写真を見せながら、可能性のひとつを口にした。
「ほんとだ。すごい傷。わたし、宇宙人にキャトられて記憶消されたのかな。もしかしたら、頭に何か埋め込まれたのかも。にしても、手術下手過ぎて草だけどね」
「確かに。宇宙人やったら、気づかれんようにやらんと」
ちなみに、アブダクションとは牧場で牛なんかがUFOに吸い込まれていくアレのことだ。宇宙人に誘拐されるアレ。誘拐のことをキャトルミューティレーションだと思っている人もいるが、キャトルミューティレーションは家畜が惨殺されることを差す。故に、キャトられるというのは攫われることではない。
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