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「感心してないで助けてくれよ。後はお前だけが頼りなんだからさ」
「はあ? 俺はお祓いとかようせんけど」
「それはわかってる。だから、一緒にダリアさんとこ行って、お前からも呪いを解くように頼んでくれよ。なあ、頼む! 一生のお願い!」
合掌する楓太の目があまりに真剣そのものだったので、気は乗らないが一緒に行ってやることにした。
以前は時々飲みに行っていたが、あの夜から足が遠退いていた。特にダリアと気まずくなったわけでもないが、店に行ったら侑咲のことや雫のことを思い出しそうで、行く気になれなかった。
久々に店の最寄駅で降り、狭い路地を歩いた。相変わらず、古い油のにおいが漂っていて息を止めたくなる。
「あれ? 確かにここだよな? ちょっと来ない間にダリアさん、店閉めたのかな」
ダリアの店があった場所に行ってみると、そこは空き家どころか更地になっており『売り土地 キタノ不動産』という年季の入った看板が立てられていた。
つい数ヶ月前までは普通に営業していた。独特の洒落た店だったし、居抜きで借りる人もいそうなものなのに、すでに取り壊して更地にしている。
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