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次のオーナーが決まっていて、建設の予定でもあるのなら話は別だが、売りに出されているところを見ると、それもなさそうだ。
狸に化かされた気持ちで善はダリアに電話をかけたが、すでに解約されていた。混乱したまま、楓太が縋るように不動産屋に電話をかけた。楓太がスピーカーにしていたので、ベテランっぽい年配の男性と思しき声が善にも聞こえた。
『ああ、二丁目の土地ね。そこはもう十五年以上更地の状態ですよ。バーがあったのは二十年ほど前ですね。最後は火事で全焼しちゃってね。オーナーの女性が亡くなったんですよ。そういう事情だから更地にしたんですけど、なかなか買い手がつかなくてねぇ』
電話を切った後、二人はしばらく放心状態だった。何度も通った店が、二十年も前に火災で全焼していて、オーナーの女性も亡くなっている……?
では、自分たちが散々お世話になった『ダリア』という女性は、一体何者だったのだろう。
生きている人間ではなかった、ということか。
それすらも確証が持てなくなって、途方に暮れた。
Googleマップで住所を検索しても、やはり更地の画像しか出てこない。
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