19Hz

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 今回は善だけでなく、あんなに大勢の人がはっきりと見て関わっていたのに、幽霊だったなんてあり得るのだろうか。  侑咲にバーの場所や能力がバレてしまったので、急遽身を隠した。ダリアが力を使って、バーのあった場所がずっと更地だったように書き換えた――その筋書きの方がまだ納得できる。どうか、そうであってほしい。  二人で図書館に行って、火災のことが載っていないか、古い新聞の記事を探した。探しながら、火災などないことを願った。 「あった。これじゃね?」  小さな記事ではあったが、確かに十九年前の新聞に放火でバーが全焼したと書いてあった。亡くなったのはバーのオーナーである『神田麻里亜』という女性だった。  顔写真も載っていないし、名前も違う。ダリアとは別人だろうとほっとしかけた瞬間、善は気がついてしまった。 「神田麻里亜ってさ……」言いながら、スマホのメモアプリに指で名前を書いた。 「カンダマリア……カンダのダとマリアのリアでダリアにならん?」 「うーわ、やば。見て。トリハダ。絶対そうじゃん。ってことは、ダリアさんって……」  顔を見合わせ、互いに息を呑んだ。それ以上は言葉にならなかった。
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