ホームランは打てない

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 最初は肉が良いと不服そうだった楓太も、食べ始めるとご満悦の様子だった。  美味しい料理に酒も進んだ。  次は事前に予約して、鍋のコースを食べようと盛り上がった。  お互いの顔が赤いことを笑いながら、軽く近況報告をした。 「お前、あのかわいい彼女と別れたの? なんでだよー。まさか、浮気がバレたとか?」 「浮気がバレたって、なんで浮気してる前提やねん。お前と一緒にすんなよ。まあ、なんていうか性格の不一致?」  性格の不一致なんてかわいいものではないが、詳細を話すわけにはいかないので、当たり障りのない理由にしておいた。 「一年近く付き合ってたんだよな? 俺は写真でしか見てないけど、あんなかわいい子と別れるのはもったいないなぁ。おっぱいも大きかったんだろ? ちょっとぐらいの不一致なら我慢すりゃいいのに」  生ビールのジョッキを片手に、楓太が言った。 「それがちょっとちゃうねん。だいぶ不一致やってん。てか、その話はもうええやん。あんま彼女のことは話したくないねん」  正直なところ、侑咲のことは一刻も早く忘れてしまいたかった。元カノと表現することさえ、抵抗がある。
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