ホームランは打てない

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「そっかぁ。まだ失恋の傷が癒えてないんだな。よし、わかった。俺に任せろ。食い終わったら風俗連れてってやるから。確かお前、まだ行ったことないって言ってたよな?」  勢いよく言って、楓太は善の肩を抱いた。良い感じに酔いが回っているようだ。 「いや、なんで? 俺はええわ」 「大丈夫だって。心配すんなよ。俺が贔屓にしてる店だから。一回行ったら、マジで世界変わるから。やっぱプロはすごいんだぜ」  それで言うと、侑咲はプロ中のプロだったんだよなぁと、頭の隅でぼんやり考えてしまい、善は急いで頭を振った。  男として風俗に興味がないことはなかったが、もともと知らない女性といかがわしい行為をすることに抵抗があったにも関わらず、今はさらに風俗嬢が侑咲と重なりそうで余計に抵抗しかなかった。デリバリー的なサービスも怖くて利用できないだろうと思う。 「それやったら、俺はバッティングセンターがええわ」 「お前、中学生じゃあるまいし、バッティングセンターなんかで性欲を発散しようとすんなよ」 「なんでバッティングセンターで性欲発散せなあかんねん。どっちかいうたらストレス発散やろ」  楓太は相変わらずの性欲お化けだったが、変わらないでいてくれることに、どこかほっとしていた。
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