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どうやら、頭から血が出ていることに気づいていなかったらしい。前から抜けたところのある子だったが、それにしても痛みはないのだろうか。雫は善の指摘に驚いた様子で、頭に手をやった。
「ほんとだ。なんでだろう。っていうか、ここってリンダくん家だよね?」
「そうやけど」
雫が遊びに来ていた頃と多少は家具のレイアウトが違っているかもしれないが、部屋は同じだ。大学入学を機に、地元である関西を離れて一人暮らしを始めてからまだ一度も引っ越しはしていない。
「えー。なんでわたしがリンダくん家にいるわけ?」
「それはこっちが訊きたいわ。住居不法侵入やで」
ただいまの時刻は深夜二時五分。魑魅魍魎が跳梁跋扈する時間帯。元カノが訪ねて来る時間ではない。
いやいや。そもそもの話が、何時だろうと元カノがアポなしで訪ねて来た挙句、勝手に部屋に入って寝ているのはおかしい。
きっと、やむにやまれぬ事情があったのだろう。雫とは気持ち良いくらいあっさり円満に別れたし、今になってこんなドッキリめいた嫌がらせをしにくるとは思えなかった。
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