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善にとって雫は、真冬のこたつのように温かくて離れがたい、居心地の良い存在ではあったが、永遠に冬が続くわけではない。お互いに運命の人だと思っていた二人にも、別れの日はやってきた。
恨みっこなしの円満破局ではあったが、友達に戻ったわけでもないので、この一年連絡を取り合うこともなかった。
からの、この奇妙な再会。彼女らしいと言えば、そうなのかもしれないが。
「もしかして、警察に通報する所存?」
「そらまあ、理由にもよるかな」
「理由って言われても……本当に記憶がないんだもんなぁ」
首を傾げる彼女に、善も首を傾げた。
「夢遊病やっけ?」
「ううん。それはないと思うけど」
善の頭の中は、ラッシュ時の満員電車みたいにクエスチョンマークが犇めき合っているが、雫の頭の中にも相当数のクエスチョンマークが浮かんでいるらしい。
もし、夢遊病かなにかで、知らずに来てしまったのなら仕方がない。寧ろ、自分の家でよかったとさえ思う。万が一、知らない人の家に入っていたら、今頃どうなっていたことか。
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