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「そうなの? 脳みそとか出ちゃってる?」
「なんでやねん。さすがに脳みそ出とったら死んでるやろ」
もれなく自分も気絶している。
「わぁ、久々に「なんでやねん」聞いた気がする」
口元に手を当て、懐かしむように雫は笑った。当時、実写で関西弁を聞いたのはリンダくんが初めてだと、よく言われていたことを善は思い出していた。
「顎、シュッとしたね」
びくびくしながら傷口の周りをガーゼで拭っている善を見上げ、雫がぽつんと言った。
「そう? 体重は変わってへんけどなぁ」
「学生のときは、もうちょっと顔がふっくらしてた気がする」
「俺も大人になったってことちゃう?」
「ああね。社会人になって、リンダくんも世間の荒波に揉まれてるんだ。あ、剃り残し」
「マジで?」
「うーん、マンダム」
顎を触った善を見て、雫は渋い声を出した。
「まだ言うてん、それ。俺も久々に聞いたわ」
ボブだった髪がセミロングになり、化粧も上達し、この一年でずいぶん大人っぽくなった気もするが、中身は変わっていないようだ。付き合っているときも、雫はこの手のジョークを好む子だった。ちなみに、この時代錯誤なネタも雫から教わった。
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