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原初、天地はいまだ天と地に分かたれず、海と空の別もなく、ただ混沌があるのみであった。
神の一声により、光が現れ、闇が出来、昼と夜とが作られる。
続いて、天。一つ所に集められた水が海となり、乾いたところが陸地とされた。
大地は混沌から生まれたのである。
そして、遥か時の進んだ現代。
「!?」
居合わせた人々は、一様に目を見張り、大地誕生の瞬間を固唾をのんで見守った。
「こ、これは・・・」
聖書に記された、天地創造における地上の隆起はかくやあらん。
「まさか」
あたかも神の号令に従うかに、混沌から地響きが湧き起こり、どおん、どおんと鳴る音とともに高々大地がせりあがる。
「神よ。私に力を!」
一人の男が放つ爆発的なエネルギーに、全世界が震えた。
――全世界は言い過ぎた、のかもしれない。
もしも全世界に奇跡の瞬間が放送されていたならきっと、という思いは捨てきれないが、実際は、日本のそこそこの地方都市の、ある町の体育館での出来事だったから。
ではいかにして、この平凡な町で天地創造の奇跡が引き起こされたのか。一か月ほど前の、現場となった体育館がある中学校の教室の一つに時を戻そう。
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