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おーーい
「おーーい！！おーーい！！」
「うーーん。うーーん」
まだ、何かフワフワしてる。
「おーーい！おーーい」
何の声？
夢？
「起きろって！」
「は？」
目を開けるとそこに居たのは、月森君だ。
「ど、泥棒……」
「泥棒じゃないし！あっ、星宮だよな？変わってないな」
「あっ、あっ、あっ、スッピン」
「スッピン？別にいいじゃん」
いやいや、そっちがよくても私の心の準備が出来てないんだつうの！！
えっ？
ちょっと待って？
「リアルな夢？」
「夢じゃないよ！現実、ほれ」
「つ、冷たい！！死んでんじゃないの？！」
驚いて月森君を見つめるとニカッてわざとらしく笑う。
この笑顔知ってる。
寂しい時に笑う笑顔。
「月森君……死んだの？」
月森君は、何も答えず。
私の頬をつねっている。
「月森君……死んだのって聞いてるの！」
頬にある月森君の手を握りしめる。
やっぱり冷たい。
この世のものじゃない。
5年前に親戚のおじさんの手を撫でた時に似ている。
この冷たさで生きてる人間はいない。
「月森君……死んだの？」
もう一度、大きい声で叫んだ。
「あーー、うるさいな！鼓膜破けたらどうすんだよ」
「破けたら病院に行けばいいでしょ？」
「はあ？幽霊見てくれる医者がどこにいるんだよ」
「やっぱり死んでんじゃん」
私の言葉に月森君は笑う。
「フッ……ハハハ」
「な、何よ！」
「星宮って面白いよな！俺、幽霊だぞ？怖くないの？」
「別に、怖くないよ！好きな人だから」
「好きな人？いつの話だよ！」
月森君は、私の頬をまたつねってくる。
「ちょっ……ちょっとやめてよ」
「あーー、ごめん、ごめん。まさか、触れるとは思ってなくて」
「触れる？」
「うん。人間に触れられるなんて、初めてだからさ。動物は、以外と触れられたんだけど……。人間は、無理だったから」
月森君の話を聞くと月森君が死んだのはついさっきってわけじゃなさそうだった。
「つかぬことをお聞きしますが、月森君っていつ死んだの？」
「えっ？俺。あれはね、去年の今頃かなーー」
「そ、それって三村希子さんの結婚式の日ですか？」
「あーー、そうそう。さすがにその日じゃなかったよ。日付は跨いでたから」
「いやいや、そんな問題じゃないし。死んだのって三村さんが結婚したから？」
月森君は、私の言葉に何かを考えているように黙ってしまった。
まさか、恋が叶わなくなったから死んだ！なんて事を彼がするはずない。
「そうだったのかな？希子が結婚したから死のうと思ったのかな？」
「えっ？何、その歯切れの悪い答え」
「あーー、ごめん。俺もよくわかんないんだよ。気づいたら、死んでたんだ」
「気づいたら……？って事は、病気だったって事？」
「それは違う。海に浮かんでたから」
「はぁーー」
勢いよく起き上がったせいで目眩がした。
「大丈夫か？」
「うん……目眩がするだけだから。暫くしたら治る」
「よくあるのか？」
「三十代になってからね。ホルモンバランスの崩れやストレスでも耳石がはずれちゃったりするらしいんだよね。お医者さんに言われた」
「へぇーー。横になっとくか？」
いやいや、何を優しくしてくるんだ！
「あ、あのさ！生きてたらいろんな事あるわけでしょ？恋が叶わなかったからって何死んでんの？月森君は、そんなタイプじゃないよね？」
「そうだよなーー。自分でもそう思う。だから、犯人探そうか」
「犯人……？いるの？」
「いるかも知れないし、いないかも知れない」
「何だよ、それ」
月森君は、私の顔を覗き込む。
「希子にちゃんと告白したい」
「はぁーー？！」
月森君の言葉に私は呆れた声を出した。
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