神々の世界樹

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神々の世界樹

昔々、今よりも遥か昔のお話です。 この大陸は大なり小なり十二の国に別れていました、十二の地にはそれぞれ神が宿り世界の均衡を保っていました。 ですがある日その均衡は小さな火種によって崩れ去ることになったのです。 この世で際も美しいとされたスピカ国の姫君フローラと隣国のデネボラ帝国皇帝の婚約が決まったのです、その話は瞬く間に各国へ広がりました。 多くの国がその話を祝福する中一部の国はその決定に不満を募らせていました。 ある国は両国の婚姻により国力が増し均衡が崩れるのを恐れ、ある国は美しい姫君を我が物にしたいと策略し、その不協和音は少しずつ各国に広がり蝕んでいったのです。 それから暫くしてフローラ姫がデネボラ帝国へ出立する当日の事、帝国に戦を仕掛ける国が現れました。 帝国はその国を抑え勝利をおさめましたが帝国が失ったものは少なく有りませんでした。 広大な国土は戦火に焼かれ、国民の多くも戦火に巻かれました。 中でも帝国へ訪れる筈だったフローラ姫を失った事は帝国にとっても、世界にとっても大きな損失となったのです。 皇帝は酷く哀しみ、激怒しました。その怒りはフローラ姫を奪った国に、そして彼女を守りきれなかった自分自身に向いたのです。 皇帝は怒りと哀しみに心が蝕まれいつの間にか狂ってしまいました、皇帝の収まりきらない怒りは各国へと飛び火し怒りは呪いへと変わっていったのです。 それにより世界の至るところで戦がおき均衡は音を立てて崩れさってしまいました。 それを悲しんだ各国の神々は全ての神に愛された聖女であるフローラ姫の眠る土地に種を蒔いたのです。 その種はすくすくと天に向かって育ちあっという間にどの国からも見えるほどに大きく育ちました。 そしてその樹いっぱいに花開いたとき不思議な光が世界に降り注いだのです。 光は世界中の生命に安らぎを与え消え入りそうな灯火に力を与えていきました。 その樹はやがて世界中に根を張り巡らせ世界からは少しずつ戦が消えていきました。 その後平和を取り戻した世界はその樹を世界樹と名付け神々の贈り物として、そして聖女フローラを忘れることの無いように大事に守ることを決めたのでした。 それから時折降り注ぐ温かな不思議な光は人々に力を与え、数百年に一度聖女と神々の使者と呼ばれる者たちがこの世に産み落とされるようになったのです。 ーリリー・ブルーエルファン著 ゾディアキア創生物語 第一章 聖女と星々より
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