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毎日通っている内に、ジャックのことがだんだんと学校内で噂となった。
ある日、教師が窓に近づいて、上からジャックに声を掛けた。
「君、毎日授業を盗み聞きしているよね」
ジャックは、反射的に逃げ出したが、すぐに待ち構えた他の教師たちに捕まって学校長の部屋に連れていかれた。
「校長先生、こいつは町で有名な悪童です。神を冒涜するこの行為。この際、二度と盗み聞き出来ないよう、耳をそぎ落とし、目をくりぬきましょう」
この学校は教会が運営していて、教師も校長も全員聖職者である。
教会は絶対的な権力を持っていた。
盗みは腕の切り落としなど、罪に応じた処罰があり、最高刑は火あぶりだ。
盗み聞きで、そこまで話が進むとはジャックもさすがに思っていなかった。
想像しただけで恐ろしくなる。
「ごめんなさい! 僕は、本を読みたかっただけなんです!」
必死に土下座で懇願するジャックを校長は黙って見ていた。
「校長先生、騙されたらいけません。こいつは盗みを働く町の厄介者です」
「ご英断を」
教師たちは校長先生に厳罰を求めた。
「まあまあ、皆さん、落ち着いて」
ようやく校長が口を開いて、ジャックはビクッと体をすくめる。
次の瞬間、耳削ぎと眼球くり抜きを命じられるのかと思うと、生きた心地がしなかった。
「私はこの少年を赦します」
「え?」
校長の言葉に誰もが耳を疑った。
「今、何とおっしゃいましたか?」
「この少年は素晴らしい努力家だ。学校に通えない境遇にあっても勉学を志して研鑽しているじゃないですか。特例として無償で通わせてあげよう」
「校長先生!」
「本気ですか? 町のネズミですよ?」
「すべての人間は神の子で、平等です」
教師たちは黙った。
校長の寛大な処置により、ジャックは罪を問われず、教室の外ではあったが授業を聞くことを許された。
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