いつか、帰ってくる

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 鼓膜がふるえるのが、はっきりとわかった。  絶対に聞きたくなかったのに耳を塞ぐことも叶わなず、その言葉は私の中にはっきりと飛び込んできた。 「わかってくれ、僕は僕の義務を果たすために行かなくちゃ」  彼の言葉に、瞼がふるえるのがはっきりとわかった。  だが、戦争の始まったこの国で、そう言った相手を笑って送り出さないのは……罪だった。  そして、人々の予想以上に戦争は長引き、そうこうするうちに彼の部隊が全滅したとの知らせが私の元まで来た。  心臓がふるえるのが、はっきりとわかった。  でも、町が破壊され、人々が傷つき、墓場に墓石が増えていっても、それでも私は彼を待ち続けた。  そしてある日戦争は唐突に終わって、唐突に私の家の玄関ドアがノックされる音が聞こえた。  「ただいま! 今帰ったよ!!」彼の声が聞こえて、心がふるえるのがはっきりとわかった。
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