アノ星の王子さま

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 四月。  大学で一番広い、大講義室でのことだった。 「実は僕、王子様なんだ」  と、隣の席に座った人は言った。 「えっ……」  一体どうした。「どこ座っていいか迷いますよね」の話の次が、それ? 「あー、えっと、そうなんですか?」 「あっタメ語でいいよ? 同じ学生としての距離感でいいから」 「あー、いやぁ」  違う意味で距離感じちゃってます。  あ。でもアレかな。これ、もしかしてギャグだったりする? そーいう距離の詰め方する人だったりするのかも。 「あっ、じゃあ、どこぞの国の王子様なんですか?」 「この星の人は知らないかもしれないんだけど、アノ星のコノ国の、ソノ国王の子どもなんです、僕。知ってます?」  あー、これは。  これは多分、ふざけてますね。  困りました。どうオチつけますか。 「あー、わっかんないですねぇ。どのへんだろ」 「だよね。あ、いいのいいの。気にしないで。え。ていうか、まじ」 「え?」 「信じてくれるの? 僕の話」 「え? え?」 「うれしー!」 「うっ……」  その時、断っておけばよかった。
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