銀色世界のチョコレート

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 だから、少なくともクラスの人数分のチョコレートを用意する必要が私たち女子には、あった。だからバレンタインが近づくと、スーパーから板チョコが消えた。百均のラッピング商品コーナーも、野盗にでも遭ったんかというくらいスカスカになった。そしてバレンタイン前日の二月十三日は、街から女子の姿さえも消えた。女子たちはどこからどこまでかよく分からない「友だち」のために、チョコを一晩中作り続けていたのだ。孤独なチョコレート工場の工場長みたいに。  でも、それが今年は、ない!  しかも、自分のためだけにチョコが買える!  恩赦を受けた囚人のように、私たちは街へ飛び出した。  さぁ、チョコレートを買おう! 誰のためでもない、私のために! ラブマイセルフ!  きらびやかなバレンタイン特設コーナーで、私たちは思い思いにチョコレートを買った。  私は、青いケースに入った惑星型のチョコレート。四粒しかない。なのに千円。これで板チョコ十枚くらい買えると思うと、自分の豪遊ぶりに頭がクラクラした。
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