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少女向けの家具が、そこに鎮座していた。入ってすぐ目に入るのが白い天蓋ベッド。そのキャノピーにもシワ一つ無く、ピンクなどの淡い色で統一されたデコラティブピローは溢れんばかりにそこにある。
ベッドの前のフットベンチもベルベットの生地で光沢が美しい。ソファーとテーブルのエリアには、一人がけのソファーに大きなクマのぬいぐるみが鎮座しており、この部屋に越してきた人間を出迎えるように此方を向いている。
壁際のドレッサーには未開封の化粧品の箱が山積みになっており、それもマリアを威圧していた。ウォークインクローゼットの扉を開くのも怖い。実家のエリカの部屋だってこんなに豪奢じゃ無い。マリアには身分不相応だ。なのにリーロンはマリアを部屋に押し込むと、自分も入りとっとと扉を閉めてマリアにソファーに着座するように促す。
「他に必要なものがあれば言え。すぐに準備させる」
「あの……アタシ、お返し出来るものが何も無いから、こんなに良くしてもらっても申し訳ないって言うか……」
もごもごと、マリアは伝える。まさかこんな歓迎を受けるなんて思っていなかったから、拍子抜けしてしまった。この部屋に掛かったお金を返すとなると、どれぐらい時間が掛かるだろうか。考えると憂鬱になる。
リーロンはマリアのリアクションに不機嫌そうだった。マリアをソファーに座らせてその向かいに座ったリーロンは、「くだらねぇ事考えてるんじゃねぇよ」と吐き捨てる。
「てめぇは今日から俺の嫁だ。俺が妻に不自由させてるような男だと思われないためにも、お前は与えられたものを好きに使えばいいんだよ」
「あ〜、ありがとうございます……」
マリアは何とか笑顔を作ったが、リーロンはまだ不機嫌そうだった。その時、コンコンと部屋がノックされてマリアは反射的に「はい」と返す。
「ご歓談中失礼します。奥様にご挨拶をさせていただきたく参上いたしました」
リーロンが「{開け}」と言えば、部屋の扉は独りでに開いた。その扉の奥から現れたのは執事服の男性で、落ち着いた雰囲気でマリアに深々と会釈する。その執事に続いて多くのメイド達がカーテシーをしてマリアに挨拶した。マリアは立ち上がり、その挨拶を受ける。
「はじめましてマリアお嬢様。ジェン=カトラーと申します。この屋敷を取り仕切るお役目を担っております。どうぞ今後よろしくお願い致します。何かございましたら、なんなりとお申し付けくださいませ」
「ご丁寧にありがとうございます。マリアと申します。こちらこそよろしくお願いします」
マリアもカーテシーで答えれば、メイド達が少し動揺した様子だった。それに首を傾げていれば、ジェンは続ける。
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