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にしても綺麗な杖だ。
「格好良いね。リーロンみたい。杖も本人に似るのかな」
「……知らね」
「そういえば、リーロンって何年生なの? たしか、リヒテンシュタン魔法学校は7年制の学校だったよね……? 14歳で入学で、リーロンは18歳だから……今年で5年生?」
「合ってる。アイン達も同学年だ」
「学校では“サティサンガ先輩”って呼んだ方がいいの?」
「“リーロン”でいいだろ。他人行儀にする必要は無ぇ」
「じゃあ、“リーロン”ね」
マリアは彼の身体に寄りかかるように身を委ね、リーロンの左耳のタッセルピアスをゆらゆらと指で揺らし弄る。
「実技試験で、特待生の資格取れるかな。具体的な条件って提示されてないから、結果が出るまでわからないんだよなぁ」
「学費ぐらい払ってやる。お前は俺が自分の妻の学園生活を支援出来ない甲斐性無しだと思ってるのか?」
「そうじゃないけど……沢山色々してもらったから、これ以上は迷惑掛けたくない」
マリアは強い意志を込めてそう言ってから、コテンとリーロンの方に身を寄せ寄り掛かる。丁度リーロンの胸の中に収まるような格好で、突然の行動にリーロンが目を見開いて驚いたがリーロンの手を握り下を見ているマリアはリーロンがどんな顔をしているかなんて気付かなかった。
「ドレスもアクセサリーも、靴もお化粧品もありがとう。ウォークインクローゼットの中がお洋服で溢れたのを見たのが初めてだったし、あれが全部アタシのために買ってもらえたものだって知って嬉しくなった。
ここに来てから毎日美味しいご飯も食べれているし、運動だって好きにさせてくれる。メリー——アタシの侍女をそのまま雇ってくれたのも感謝してる。
——本当に、ありがとうリーロン」
マリアはそうして顔を上げた。リーロンの瞳をジッと見つめて、熱を込めてもう一度「ありがとう」と伝える。リーロンは暫し言葉を失ったようにしていたが、やがて耐えきれないとでも言いたげな性急な動きでマリアをソファーに押し倒し込めると唇を重ねる。ぬるりとした舌が口内に入り込んできて、マリアは途端にパニックを起こし暴れた。
バタバタと足をばたつかせ、リーロンの身体を必死に押し返す。
「なっ、にするのっ!? なにしてんの!?」
「……るせぇな」
「逆ギレ!? 嘘でしょ!? 信じられない……アンタもなんか言ってやってよ! アンタの主でしょ!? アタシアンタの名前知らないけど!」
マリアはソファーから転がるようにして這い出ると、ふかふかのラグに座り込んで叫んだ。そして部屋の隅に立つリーロンの側近であろう青年に、リーロンの方を指さして批難する。批難してから、はたと気付く。気まずそうにこちらを見ているその青年。たしかリーロンが部屋に入ってきた時一緒に入ってきていた。つまりリーロンの膝に招かれて自らの足で向かったところも、膝の上で会話をしていたところも、先程のキスシーンも見られていることになる。
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