19話:楽しくやろうぜ筆記試験

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 【お帰りはこちらから】の案内で、あのタイッシュとかいう少年は我先にと帰っていった。メイリーは残ったが、明らかに怯えており顔が青醒めている。 やがて5分が経過し、会場には半分程の受験生が残った。  それから、作戦会議としてまた5分、時間が与えられる。 「……オークは単細胞で考える知恵が無ぇ。オレが5匹仕留めるから、オマエ等はその間死なないように逃げてりゃいい」  ぽつりと、あの時タイッシュを引き留めた少年が言った。獣人族というやつなのだろう、猫のような耳と二又の尻尾を持つ少年だ。金色に染めたツーブロックの髪に、猫耳を飾るバチバチの派手なピアス。F-3(この列)の中で一番“戦闘”という行為に対して落ちついている、というより好戦的な様子だ。 「そんな、一人でなんて危ないよ!」  それを、前から二番目に並んでいた茶髪の子が止める。 「じゃあオマエ等あれ相手に戦えんのかよ」 「それは……」 「出来ねぇなら出しゃばんな」 「ちょっと! そんな言い方無いじゃん!」  あ〜これ喧嘩になるやつだ。好戦的な金髪の少年の提案を危ないと棄却する茶髪の子の口論にも似た話し合いにメイリーも参戦したところで、マリアはどうどうとその流れを止めた。 「ま〜ま〜、仲良くやろうよ。この試験中はアタシ達、仲間なんだから。とりあえず自己紹介でもしてさ。   アタシはマリア。使える方法はこのカードでの魔神の召喚。他にも剣が扱える、守りも攻めも出来るオールラウンダー自称してる。アナタは?」  マリアは手始めに、茶髪の子に自己紹介を振った。彼女は恐る恐る、口を開く。 「私は、スザンヌです。得意魔法は治癒で、攻撃は苦手……」 「……ウチはメイリー。固有魔法は空を飛ぶことと空を飛べる粉を出せること。今はしまってるけど、普段は背中に羽根があって、その羽根の鱗粉に触れたらそれも空飛べるようになる。上手く飛ぶためには、練習は必要だけど……」 「オレ、エレン! 魔法は、盾が、出せる。地味だけど、絶対破れねぇ。だから守りなら出来る! あと……一応、サメの人魚だから、水中でずっと呼吸できるよ。地上(ここ)じゃ、役に立たないだろうけど……」  マリアから始まり、茶髪の子、メイリー、一番背の高い子と自己紹介をする。マリアはその流れで、促すように金髪の少年を見た。少年はむしゃくしゃした様子で尾をバシンバシンと揺らし頭を掻いたが、「……ウイント」と名を告げる。 「オレは……見ての通り猫又の獣人。爪は鋭利で、だからオークの首を掻っ切るぐ らい簡単だ。……固有魔法は猫の使役。そんだけ。  この中でまともに攻撃に使えんの、オレの爪だけだろ? マリアとか言ったっけ? オマエが呼び出す“魔神”ってあの無音にさせる奴だろ? それだけじゃオークは倒せねぇよ。オレは戦いにだって慣れてる。だからオマエ等は逃げて……」 「いや、そうとも言えないね」  マリアは考えるように顎に手を当て、全員の目を見る。全員の視線も、マリアに集まってきていた。
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