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21話:お久しぶり幼馴染、こんにちは猜疑心
🐰
「成程な、事情は分かった濡れ鼠」
「あ、事情は理解しても許してはくれないタイプねマリアちゃん分かります」
「当たり前だろうが。数年ぶりに会う幼馴染が待ち合わせ場所に現れたと思ったら、“今戦い終わりました”と察するに余りある姿をしているんだぞ? 正気を疑う」
「うそ、そこまで言う?」
「髪型が崩れている上にびしょ濡れ、オマケに血の匂いが隠せていない。そんな状態で現れて、俺がどう思うか考えられなかったのか? 髪の毛の血も所々洗い流せてもないし、全くもって神経が理解出来ない」
「マジか、どこまだ血? {水}で洗い流す」
「……ブティックに行こう。そこで新しい服を買って、ついでに髪の毛の血を落とす」
「洋服を変えるのはいやよ。この服メリーが今日アタシのためにってくれた服なんだから」
「なら、もう少し大切に扱うべきだったな」
「それはそう。頭に血が登っちゃって、冷静な判断が出来なかったのよね〜」
リヒテンシュタン魔法学校の受験のうち実技試験が終わり、マリア達はそれぞれの健闘を称え、『入学式で絶対に再会しような!』と爽やかに別れた。そこからマリアは、以前から約束していた幼馴染に会うために約束の場所に向かったのだった。幼馴染は既に到着していて、本を読んでいた。そしてマリアの濡れた髪と血の匂いが染み付いたワンピースを見て、眉を顰めたのだった。大体の予想は着いていたのだろうが、一応「なにがあった?」と問われ、マリアは激戦の試験を語って聴かせた。そして冒頭の台詞に戻る。
マリアが{消}と唱えると、ピエロのような魔神が現れ、一瞬マリアを手に持っていた布で包むとパッと布を剥がした。その時にはもう、髪を濡らしていた水も服に染み付いた血の匂いも無くなっていて、モンタはため息をつく。
「相変わらず、便利な魔法だな、お前のは」
「えへへ、オールラウンダーな自覚あるの、褒めていいよ」
マリアは{消}に手を振って感謝を伝えると、カードに戻してホルダーの中にしまった。崩れてしまった髪型は結ぶのを諦めて、リボンのバレッタを取り手櫛で軽く梳かしてからそのままのロングヘアにする。
マリアはルンルンとした歩調でモンタの手を取り歩き出す。そんなマリアに、モンタは肩を竦めていた。
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