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そのまま、敢えて気配を消すこと無く森の中を進む。メリンダはもうマリアが森の中に入ってきたのを気配で察しているだろう。それで構わない。むしろ己の存在を誇示するように、マリアは堂々と森の中を進み魔神の加護を受けた大木を目指した。極めつけは{音}の魔神を召喚したことだ。
「♪アタシ気づいちゃった
♪突いちゃったその背中を見つめた瞬間
♪惨状と感情の頑丈さに」
辿り着いた大木の、ロープで作った簡易エレベーターを蹴ることで重石を下ろして代わりに自分がブンッと木の上へと持ち上げられる。
「♪アタシ気づいちゃった突いちゃった
♪気づいちゃったよ独りで生きていけると」
そのロープで振り子のように身体を揺らして、枝に降り立ちツリーハウスの扉を開く。入ってすぐ、床にケーキの箱を置いた。
「♪それもそうだが」
マリアはツリーハウスの中、まだ空っぽの食料庫の扉を開いた。かくれんぼでもしていたかのように、そこにはメリンダが身体を小さくして座っている。そしてマリアが迷わずその蓋を開いたことにニヘラと笑う。マリアはそんなメリンダの腕を引っ張るようにして彼女を立ち上がらせた。
「♪ねぇねぇつまらない
♪それじゃきっとつまらないよ
♪アナタの髪や声をもっと感じたいのに」
立ち上がらせたメリンダの髪を撫で頬を撫で喉を撫で、彼女の周りをくるりと回る。ふわりと、今朝メリンダからプレゼントしてもらったばっかりのワンピースの裾が揺れた。突発的なミュージカル。歌って踊って、気持ちよくなる。そんなマリアの性格をよく知っているから、メリンダはマリアに身を委ねるようにマリアの方を振り返った。
「♪ねぇねぇ構わない 誰もアナタに敵わないの
♪どこを比べたって全部段違いなのね」
自分を振り返ったメリンダの腕を取り、抱擁待ちのように広げさせて、彼女に後ろから抱き着かれるように身を寄せる。
「♪そうアナタの横眠りにつく」
そして、耳元で囁いて、耳に音を立ててキスをした。
ブワッと耳まで赤面するメリンダの手を取り、遠心力で振り回すように踊る。勿論、両手は指と指を絡めた俗に言う恋人繋ぎで。
「♪アタシとアナタのデイバイデイ デイバイデイ
♪全ては今日笑ってるアタシの事を
♪超担ってるアナタのため
♪デイバイデイバイデイバイデイ
♪一体どうしちゃったんだろう
♪分かってるんだ」
ただ子供が回るようなおざなりなダンスは、やがて本格的で激しい社交ダンスに変わる。マリアが女性のステップで、メリンダが男性のステップを踏む。メリンダがマリアの身体をふわりと持ち上げて、そして腕の中に横抱きにすると、{音}の間奏を挟み歌の続きを歌う。この歌を歌うのは、初めてではないのだ。
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曲名:デイバイデイズ
作詞:syudou
作曲:syudou
編曲:syudou
唄:初音ミク・可不
歌詞参考:https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/48180.html
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