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「おはようございますマリア様」
「ん〜……ん。おはよう、メリー」
キャノピーを開いてタッセルで留めていれば、目覚めたマリアはうーんと大きく伸びをしていた。そしてメリンダの顔を見ると、ニコリと微笑む。
「よく寝れた?」
「メリンダにとっては、とても良い夜でした!」
嘘はついていない。『眠りました』とは言っていないし、良い夜を過ごしたのも事実だ。マリアはうんうんと頷いて、「今日も可愛いねメリー」と近付いたメリンダの頬にキスをする。
彼女が顔を濯いでいる間にミルクティーを入れる。マリアは冷たいミルクティーが好きだから、普通の紅茶を煎れるのとはちょっと違う。具体的に言うと手間が違う。それでもマリアのためにメリンダは毎朝この行為を行う。
顔を濯ぎ終わったマリアが紅茶を飲んでいる間に、メリンダは今日の服を用意してマリアに見せた。街に降りるために、街の人間に溶け込める服装がいいだろうと購入してきたサマーセーターとショートパンツはマリアに好評だった。街の人間が多く身につける、安い染料で染められたくすみ系の青と緑で統一されたその洋服は、お忍びにはピッタリである。
「今日も美味しいミルクティーでした」
「そう言っていただけてメリンダは幸せ者です」
綺麗にミルクティーを嚥下し終えたマリアは、早速着替え始める。マリアとしても今日のお出かけは楽しみらしい。もしくはそういう風に見せているだけかもしれないが、メリンダはそれでも構わなかった。メリンダに身を委ね洋服を着替えるマリアは本日も可愛らしい。最近は身体が少女から女性に変わり始めた影響で、白い背中には艶めかしさが出てきた。その背中に見蕩れているとあの蛇が邪魔しに来るから不愉快だが、それまで堪能出来るのも事実だ。
「おみ足失礼しますね」
そう言って靴を履き変えさせれば、マリアはメリンダの頭をなでなでと撫でていた。
「マリア様、楽しそうですね」
「だって今日とっても楽しみなんだもの。それに受験のプレッシャーからやっと開放されたからねぇ。試験を受けちゃえばもうあとは結果を待つだけ、アタシはのんびーり出来るってわけよ。メリーはアタシとのデート楽しみじゃない?」
「まさか! 楽しみすぎて踊り出しそうですよ」
「あははっ、可愛いねぇメリー」
マリアは本当に楽しそうで、余っ程上機嫌なのか「折角だし髪型お揃いにしようよ」と本日の髪型に頭上のツインシニヨンを注文した。メリンダとお揃いの髪型である。メリンダと違い毛の長さが長いため、シニヨンに収めきれなかった髪は三つ編みにしておさげにする。その髪型にマリアはさらにテンションを上げて、何度も「ありがとう」とメリンダに感謝した。
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