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それから二人はハンバーガーを提供する店に立ち寄りそこでハンバーガーとフライドポテトを注文する。先の万国博覧会にてある男が提案し販売したこのハンバーガーは一気に大勢の心を掴み、天龍の国の街には殆ど一店舗は店を構えている食べ物となった。マリアはこれが好きなようで、メリンダが遠征帰りにダントルトン家の屋敷に買って帰った時なんかは『あ〜ジャンキーな味〜!』と喜ぶ程だった。『これでフライドポテトもあれば完璧なのに』とポロッとマリアが零したから、次にハンバーガーを買った時に一緒にポテトを揚げるように注文すれば、他の客も興味を持ったのかハンバーガーと共にポテトを食べる文化は一気に拡がった。その火付け役になったことを知らないまま、マリアはポテトとハンバーガーが一緒に食べられることに無邪気に喜んでいる。昼間から炭酸の強いリンゴ酒を飲めたこともマリアの機嫌を良くした。もうピアスで腹を立てていたことなんて、彼女にとっては遠い昔の記憶になっただろう。そう思うとメリンダも機嫌が良くなった。
「やっぱりこういうのってたまに食べたくなるんだよね〜。身体がジャンキーさを求めてるって言うかさ〜?」
「マリア様、よくそれ言いますよね」
「手掴みで食べれる気軽さも尚良し! 毎日ナイフとフォークの順番気にしながら食事とかぶっちゃけ怠いのよ」
「今日は思う存分楽しみましょうね!」
「ね! このお酒も美味しくて最高だわ! この街は全体的に食べ物が美味しいわね」
「食が充実してるのって良いことですよね」
「本当にね! 有難いわ〜」
ハンバーガーを食べ終え手をキチンと拭いた二人は、次にブラブラと街の中を散策し始める。マリアは大都市ほどとはいかずとも街の道が舗装されていることに感動していたし、初めて見て回る街の店舗一軒一軒に興味を示した。勿論それら全てを回っていたら時間が足りないので、主に店の外から興味を持って眺めるだけだったが、それでも楽しそうである。
「やっぱりメリーと自由に外を出歩くのって最高に楽しいわ〜! 今日は付き合ってくれてありがとうね!」
「お易い御用ですよ! むしろメリンダを選んでくださって嬉しいです!」
やがて三時を告げる鐘が鳴った時、マリアはうーんと伸びをして改めてメリンダに今日一日の感謝を述べた。締めの言葉を言い始めているからきっと、今日はもうそろそろ帰るつもりなのだろう。屋敷に居着いて日の浅いマリアは夜まで外を出歩くべきではないと言う判断だろうし、メリンダもそれには賛同だった。ただ二人きりのデートが終わってしまうと思うと少し名残惜しかった。
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