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25話:白亜の国で拾ったアタシの侍女
🐰
四年前、マリアは【白亜の国】を訪れる機会があった。というのも、ひょんなことから白亜の国に住む貴族と知り合う機会があったのだ。侯爵の爵位を賜っているその三人兄弟の貴族から、今年の避暑旅行はぜひ我が国へと勧められ、泊まる別荘まで手配してもらったから、両親も姉も有頂天だった。しかも『代わりと言ってはなんですが、マリアお嬢様は我が邸宅に泊まっていただけませんか?』『マリア様とゆっくりお話出来る時間が欲しいのですよ』『マリアにもきっと楽しい時間を過ごせると約束しましょう』と三兄弟が言うものだから更に上機嫌である。他人が旅費を負担してくれる旅行で、尚且つ邪魔な娘が居ないのだから。
そうして出掛けた避暑旅行であってが、マリアは行ったことを後悔していた。そもそも出会いからしておかしかったのだ。
ある日三兄弟の長男がマリアの前に現れたかと思ったら、『お久しぶりですマザー! 嗚呼ずっと貴女に逢いたかった!!』と抱き締められ、人違いですと言えば何かを納得したように『失礼したね』と身なりを正し、改めて名乗った。
『私はカエルム。カエルム=アッシャー。普段は白亜の国にて皇帝より承りし領地を経営している貴族の素敵なオジサマです。して、貴女の名前は?』
『……マリアです。マリア=ダントルトン』
『マリア! 素晴らしい名前だ! この世界で貴女以上にその名前が似合う人間は居ません、私が保証しましょう。
さてさて……実は私、昔貴女に助けられたことがあるのですが、憶えていらっしゃいますか?』
『いいえ、何も……』
既に逃げ腰なマリアだったが、まるで舞台俳優のように大袈裟に驚いたカエルムは一瞬でマリアの背後に回ると肩を抱き『ならば説明させてください、私と貴女の出逢いを』と求めてきた。当然断った。
話し合いの結果、『とりあえずお友達から始めませんか?』というマリアの願いが考慮され、マリアはアッシャー侯爵家の三兄弟、上からカエルム、インフェルス、ゲヘンナと“友達”になった。
のだが、この三人、特にカエルムの距離の詰め方がマリアには苦手だった。インフェルスはマリアを淑女として丁重に扱い、ゲヘンナは距離の測り方を見定めているというのが分かるのだが、カエルムはまるでマリアと古い知り合いのように愛想良く元気に、はっきり言えば無遠慮にマリアとの関係性の距離を詰めてくる。彼等の住む屋敷にマリア用の客室が完全に完備されていたのもマリアは気が引けた。
『気に入ったならここに住んでもいいんですよ』とカエルムが言うから勿論お断りした。朝食と昼食までは頑張ったが、それ以上は限界だった。マリアは三人を言いくるめてなんとか街に出ると、夕飯を求めてぶらぶらと街を歩き始める。そんな夜に丁度、春を売る少女に出会った。
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