25話:白亜の国で拾ったアタシの侍女

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「でも、マリアちゃんのお陰で薬が買えたの……本当にありがとう……」 「ああうん、その点に関しては良かったよ」  マリアはその後、アナスタシアと一緒に彼女達が押し込まれている部屋に入ったが、酷い有様だった。硬いコンクリートの床に薄い毛布だけ、寝台どころか枕も無い。そんなところに雑魚寝して、皆具合悪そうにしている。この孤児院の人間では無いマリアが来ても新しい仲間(被害者)が来ただけと思ったのかスルーである。 「アンドレイ、薬買ってきたよ。これを飲めば、きっと風邪も良くなるからね……!」  アナスタシアはそう言って、部屋の隅で丸くなって魘されていた少年に駆け寄る。その少年の傍には黒髪の少年も居て、アナスタシアが薬を買ってきたということを聴き苦い顔をした。 「……薬なんていらなかった」 「おい、ドゥーシャ! 折角アナスタシアさんが買ってきてくれたってのに……——」 「オレは、アナスタシアにあんなことさせてまで得る薬なんて無くてよかった」  どうやら弟は自分が風邪をひいたせいで姉に売春させたことを悔やんでいる様子であり、黒髪の少年もそれは同じ気持ちだったのか俯く。だがアナスタシアは明るい声で「大丈夫よ!」と言いマリアの手を引いて二人の前に引っ張り出した。 「この子が助けてくれたの! マリアちゃんが私の時間を買ってくれて、美味しいご飯を食べさせてくれて、オマケに薬まで買ってくれたのよ! だから大丈夫、私は誰にも酷いことされてないから!」  アナスタシアに紹介されてしまい、マリアは若干気まずい気持ちになりながら「どーも」と頭を下げる。少年二人の警戒した視線を浴びて、マリアは苦笑する。 「ねぇそれより、ここが犯罪の温床になっててアナタ達がその片棒を担がされてるって本当なの?」  マリアが尋ねれば、黒髪の少年がバッと立ち上がった。彼はマリアの腕を掴み強引に引っ張ると、部屋を出て廊下の奥の倉庫のような場所へ連れ出す。そしてマリアを壁に叩き付けるように解放すると、「黙ってろ!」と急に声を荒げた。
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