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「痛っ……は? なにすんのアンタ……」
「お前、少しでも俺達の身の安全を考えた発言は出来ねぇのかよ!? 今の話を余所者のアンタに知られたって分かったら、アナスタシアさん達は殺されんだぞ!?」
「それは……たしかに考えが回ってなかったわ。でもあの部屋に大人は来る? 来ないでしょ? 誰も死臭の漂う場所になんて来ないもの」
「てめぇ……! 言わせておけば好き勝手言いやがって……!!
いいか、ドゥーシャとアナスタシアさんを助けてもらったことは感謝してる、だがそれだけだ!」
「待ってよ、助けになりたいの。アナスタシアを見た時、助けてあげたいって思った。アタシの魔法なら、ここにいる全員を大人から解放することだって出来る」
「解放して? その後は? どうにもならねぇよ、俺達は全員犯罪者だ。俺達が役人に駆け込めない理由が分からねぇのか? 助けを求めることは即ち自分が犯罪者ですって告白してることになるんだよ!! この国は子供だって容赦無く法で裁く。一度刑務所に入りゃもう出てこられねぇよ、冬が越せねぇんだから!」
「落ち着いて、話を聴いてよ、えっと……名前は……」
「てめぇは知らなくていいことだ。とっとと出てけ、もう俺達に関わるな!! てめぇが居なくても、アナスタシアさん達はもう少しで自由になれるんだ!!」
「それ、どういうこと……?」
突然少年から放たれた言葉に、マリアは問い返す。彼はしまったと言いたげに口を抑えたが、口から出てしまった言葉はもう消せない。
「……そういう契約になってんだよ。俺がここから解放されるだけの金を稼ぐ。その金でアナスタシアさんとドゥーシャは自由になれる。そう契約した。あの忌々しいクソ神父と」
「お金を? アナタが?」
「ああそうだよ! 見てろよクソビッチ、」
少年はそう言うと、はめていた手袋を外してマリアの腕を掴んだ。マリアはそれに驚いたが、それ以上に掴まれたところが固くなっていく感覚に目を見開く。見れば、彼に触れられた所から徐々に自分の右腕が黄金に変わっていっていた。
「これは……」
「{世界一裕福な男}、それが天啓で告げられた俺の固有魔法。触れたものを黄金に変える。でも一生じゃない。長くても三日で解ける。だから観光に来て二度とこの国に来ない奴等にそこらへんのゴミを黄金に変えて安く売り付けて金を稼ぐ。金の回収スピードは遅いが確実だ。分かるか? 俺はてめぇの力なんて借りなくてもドゥーシャ達を自由に出来る」
「……それで、アナタは? アナタはどうやって自由になるの?」
ギッと強く睨み付けてくる少年に、しかしマリアは怯まなかった。少年は前髪を掻き毟ると観念したように「……俺のことはいいだろ」と呟く。
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