7人が本棚に入れています
本棚に追加
「良くないわよ、あの二人はアナタ一人が犠牲になって自由の身になることを喜べるような人間なの? 違うでしょ? 自由になるならアナタ達三人でなきゃ意味が無い、でも金の成る木であるアナタをこの組織の人間は手放したりなんてしない」
「だったら、なんだよ……もう疲れた、帰れよ……お前には関係無い話だろ……苦労も知らなそうな女が、俺達の問題に首を突っ込んで来るんじゃねぇよ……」
マリアは目を細め、そして少年の頬を両手で挟み引き寄せた。少年は驚いて目を見開く、その見開いた目と目を合わせ、マリアはゆっくりと言い聞かせる。
「今、アナタの前には二つの選択肢がある。
一つは、当初の計画通り二人だけを自由にしてアナタは死ぬまでここのクソ野郎共に扱き使われる選択肢。
もう一つは、アタシと協力してクソ野郎共を打倒し、アナタ達三人で自由になって生きていく選択肢。
どちらを手に取る?」
「……そんなこと、出来るわけ……」
「出来る。アタシなら出来る。絶対にやって見せる。だからアタシを信じて。三人で幸せになるの」
少年は、呆然とマリアを見ていた。マリアはそんな少年を置いて倉庫を出て、先程の部屋に戻る。部屋に入ってすぐ、心配そうに二人が帰ってくるのを待っていたアナスタシアと薬を飲み終わったらしいアナスタシアの弟の視線に出迎えられる。
「マリアちゃん……ヴィーチァくんは……?」
「じきに来るわ。彼が来たら荷造りをして」
「荷造り……?」
「そうよ。ここを出ることになると思う。兵士が来て、悪い大人を全員逮捕するの。アナタ達は兵士に保護される」
「そんな……マリアちゃん、貴女が私達のことを考えてくれたのは嬉しい……でもそれは無理よ。この国の兵隊は、子供だって容赦無く捕まえる……私達も、捕まっちゃうわ……」
「捕まらない唯一の方法があるって言ったら?」
その時丁度、ヴィーチァという名前らしいあの黒髪の少年が戻ってくる。その頃には部屋の子供達の視線は皆マリアに集中していた。
最初のコメントを投稿しよう!