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「……ええ~?」
ドアに向かって伸ばした手をゆっくりおろし、ミス7はもぞもぞと布団にくるまる。
「ちょっと、何今の。さすがに私でもわかるわよ。最後の最後でドジ踏むんだから」
部屋を出ていく直前に見えた、真っ赤に染まったミス6の耳。
おめでとう、と絶対慣れていなさそうな口調で言ったときの、少しむずがゆそうな表情。
あれがなかったらたぶん騙されて信じていただろうけれど、でも、流石に気づいた。
「ぜったい、社長の命令じゃないって~!」
ばっふん! と思いっきりベッドにダイブし、ミス7はくふふっと頬を緩めた。
――嬉しい。
「うれしい、うれしい~!」
ごろんごろんと転がり回るミス7。
ミス6が祝ってくれたのも嬉しいし、誕生日を祝ってもらえたことが嬉しいし、その相手がミス6なのが嬉しい。
今日は朝から誰にも会っていないから、今年の誕生日を祝ってくれたのはミス6が初めてなわけで。
誕生日、一番最初にミス6からお祝いの言葉をもらえたのが、くすぐったかった。
たぶんちょっと、心の中で思っていたのだ。
お誕生日おめでとう、は、誰より先にミス6から言われたい。
「ごめんなさい、誕生日。私やっぱり、あなたとヨリ戻すのやめるわ!」
ハイスぺスパダリ彼氏に振られるのがどうでもよくなってすっ飛ぶくらい、一年に一度あるかないかの爆弾を、最後に落としてもらえたから。
「ああやっていっつもデレてれば可愛いのに~、ね~、まるまる」
自分で命名した布団に話しかけ、調子に乗りまくったミス7が、ミス6の予言通り毒と下剤入りの林檎でお腹をくだすのは数時間後の話だ。
もちろん、体内の内臓をわしゃわしゃ起動させて、すべて解毒した。
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