(お祝い)シークレット

5/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 ミス6は私みたいにもっと自由に生きればいいのに、といつの間にか取り出した唐揚げをもっしもっししながら、ミス7はぷはぁ~と満足そうに笑った。  ミス7の顔の周りにはお花がたくさん咲き、口と枕の周りには油がたくさんついた。  無言でそれを見つめ、続いて時計を見て、自分の膝に視線を落として、ミス6はすっと息を吸う。 「――ミス7」 「なに? 言っとくけどこのお布団はお洗濯しないわよ。私のものをどうしようと私の勝手でしょ」 「お布団はもちろんあなたが寝たあとにひっぺがしてコインランドリーに持ってくけれど、それはそれとしてもう一つ、社長からの命令遂行しておくわね」  布団を取られまいとぎゅうううっと握りしめているミス7に、ミス6はさらっと言った。 「――誕生日、おめでとう。ミス7」  ドンガラガッシャン!  ミス7がベッドから転がり落ちた音である。 「……ふえ……?」  ミス7は目をパチパチさせてミス6を見ていた。  ミス6はおそろしいほどの無表情だった。 「えっ、ちょっ、へっ? 待っ」 「それじゃあこれで任務は全て終えたから、私は帰るわね」 「えっ、ちょっ、へっ? 待っ、もう一回、ミス6!」 「Adieu」  中学生女子とは思えないほどのイケボで告げるなり、ミス6は軽やかに身を翻して、部屋から出て行ってしまった。  ばたんとむなしくドアが閉まった。  ベッドから落っこちて布団に絡まったまま、手を伸ばした態勢で固まるミス7が部屋に一人残された。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!