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序章
「どういうこと……ですか?」
「別に複雑なことじゃない。こいつが女装した男であるように、俺も男装した女、というわけだ」
真己の脳裏に、ある物語の名前が浮かび、そして無意識に言葉にしていた。
「とりかへばや……物語?」
「ああ、そうだ。俺達の入れ替わりや事情を知る人間達は、その平安時代の物語になぞらえて、よく皮肉を言う」
目の前の男装した美しい女性は特に気分を害した様子もなく、真己の言葉を肯定して大いに笑った。
"夢か現か はたまた幻か――
――真は絶えず朧げな月の如し"
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