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車は静かに走り続けた。
エンジンの音は静かで、流石は世界的に有名な高級車と言ったところか。
スクールゾーンを車が走っている最中は、入学式と言うこともあり、保護者や新入生も含め皆こちらを振り返っていた。
スクールゾーンは、本来なら生徒達の登下校時は交通規制が敷かれる場所だ。
それを無視あるいは許可を貰って迎えが来たかは、日和には分からなかった。
道路に出たところで、好奇の視線に晒されることもなくなり、日和は、後部座席で足を組み、車内の窓を再び開けていた。
そして――
「迎えは要らないと言ったはずだけど」
運転している執事と思わしき初老の男性に、窓から見える景色を見ながらそう言った。
「大旦那様からのご命令でございます」
「つくづく信用されてないな」
先程の真己に対する態度とは打って変わり、口調は冷たかった。
「恐れながら、お嬢様のお身体を気遣ってのことかと存じます。」
「もういい」
運転手は穏やかな声で丁重に日和に答えたが、会話はそれ以上は続かなかった。
そして、車内の窓から外を見る日和の顔はとても美しかったが、表情は氷のように冷たかった。
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