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第3章 帰る場所があるということ
――朧月市駅から、バスで20分ほど東に向かったところ、そこは閑静な住宅街、いわゆる中流家庭の世帯の家が立ち並んでいるエリアの一つだ。
決して大きくはない分譲戸建て住宅が、隙間なく立ち並んでいる。
庭先に花を植えている家庭もあり、桜や春の花は満開を迎えていた。
そして、小さな2階建の戸建て住宅の前に真己は足を止めた。
「ただいま戻りました」
ガチャと、玄関のドアを真己が開けた時だった。
甲高い女性の声が玄関中に響いた。
「ちょっと何この荷物?! 邪魔なんだけど!!」
玄関には段ボールが数箱置かれていた。
「あ、帰ってきた!」
そう言って、真己の方を振り返った女性はTシャツにジーパン、10代後半くらいの気の強そうな細い眉と一重瞼の目で真己を睨みつけた。
「あの、真由美さん。どうかしたんですか?」
真己は状況が読み込めず尋ねた。
「これ、あんたの荷物でしょう?!」
玄関にあった段ボールには、見覚えがあった。
「はい。祖母と住んでた家から持ってきたもので、ほとんど捨てたんですけど……処分できないものもあって」
祖母と暮らしていた時の荷物はほとんど処分していた。持ってきたのは僅かな自分の着替え一式と祖母の遺品と遺骨くらいだった。
祖母は生活保護受給者だった為、葬儀費用は国から出たが、お墓を立てる費用までは出してもらえず、仕方なくここに持って来ざるを得なかった。
「まさか、これ私の部屋に全部運ぶつもり?!冗談じゃないわ!ただでさえ私の部屋は狭いんだから、必要最低限のもの以外は捨ててよね!!」
「……はい」
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