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幼き俺(4歳)
「お父しゃん、見てて」
砂場にしゃがんだ俺に、親父が「うん? 何だろう?」とにっこり微笑み返す。
俺は、いつも店が忙しくて滅多に遊べない親父と公園に来れたことが嬉しくて、とにかく何でも、得意なことを見せたかった。
俺は持ってきたおもちゃのフライパンに、スコップで砂を入れて、拾い集めたどんぐりをたっぷり乗せ、もう一度「見ててよ」と親父を見上げた。
親父が「ほほう?」と見てくれているのを確認して、「いくよ」と言った。
俺は片手でフライパンを上下に振って、チキンライスに見立てた砂とどんぐりを宙に上げ、落とさないように返してキャッチする。二回、三回と振って見せた。
得意顔で親父を見ると、
「おお! 左我士、すごいじゃないか! いつの間にそんなことできるようになったんだ」
と、親父は白い歯をきらりと光らせて、手を叩いて喜んだ。
「へへ、保育園のお砂遊びでいつもやってるんだ。みんなにしゅごいって、言われたんだよ。いつもお父しゃんのお仕事見てるからね」
俺は親父のびっくり顔を見て大満足で、もう一度振って見せた。
親父は、「そうかそうか、左我士は凄いなあ!」と、俺の横にしゃがんで、頭をぐしゃぐしゃに撫でてくれた。
「左我士になら、お父さんの料理、任せられるなあ!」
俺は親父に大絶賛をもらって、嬉しい気持ちで胸がいっぱいになった。
「うん!」と、大得意に何度もフライパンを振ると、周りにいた子たちも「じょうず!」と言って集まった。
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