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 トイレから戻る途中、コピー機の前で首を傾げている美香を見かけ、 「大丈夫ですか?」  立ち止まって声をかけると、 「あっ、ごめんなさい。杉田さんもコピー使いたいんですよね?」  慌ててカバーを持ち上げ、原稿を拾い上げようとする。 「いえいえ。僕はたまたま通りかかっただけですよ。それより、倉澤さんが困ってるみたいだったから」 「そうなんですよ……これ、両面コピーってどうやるんですか?」 (よし来た。得意分野!)  心の中でガッツポーズしながら、 「ここを押して……」  と説明しつつ、コピーをとってあげると、美香は、 「杉田さんさすが!ありがとうございます」  一礼とともに笑顔を見せる。その後で、少し顔を近づけてきて、 「何となく聞きづらくって……」  小さな声で言いながら、チラッとオフィス内に目を向けた。  その視線の先では、黙々とデスクに向かって仕事をする社員たち。 「遠慮しなくてもいいんじゃないんですか?倉澤さんは新人なんですから」  直人も新人、それに年下なのに分かったようなことを言うと、彼女は小さく首を振って、 「私は新人って言っても、中途だから、このくらいはってね」  と苦笑してから、 「ありがとうございました。今週は2回目ですね。助けてもらったの。コピー機つながりで」  この間と同じように、白い歯を見せて去っていった。 (今週は2回目!)  そう。直人も同じことを思っていた。  直人の美香への思いが一気に膨らみ、溢れようとしていた。
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