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記憶
僕はかなり間抜けな顔をしていたのだろう。
桜子と夏菜は一瞬顔を見合わせて吹き出した。
「いやいや。あんたこそ本気で言ってる?もしかして、その時の記憶無いの?」
そう言われると、記憶が曖昧で自信が無い。
「用水路に落ちた時、頭打ったのかもね。発見が遅れてたらミッちゃん死んでたかもしれないって、ウチのママが言ってたよ。その時の話をミッちゃんから聞いたことないし……あー……そうか」
桜子が何か思い出して納得している。
「そういえばあの頃のミッちゃん、男子にイジメられてたからあんまりちゃんと話せなかったんだよ。靴に画鋲入れられたり、机に花置かれたり」
「あぁ……。今なら、あの頃の自分に何やってんだって言ってやりたいけど、当時は光雄に話しかけるとコッチもいじめられると思うと怖くて……助けてあげる勇気もなかったんだ。今更だけど……ごめんね、光雄」
記憶に残る机の上の花は、僕の席だったのか。
「えっと、じゃあ山野先生が泣いてたのは?」
「山野先生があんたの机に花置かれてるのを見てイジメに気付いたんだよ。『お友達にこんな酷いことをするのはやめて』ってみんなの前で泣いちゃったことはよく覚えてるわ。先生でも泣くんだって衝撃だったもん」
「イジメられて辛かったよね。でも、見てるだけだった私達もアイツらと同罪か。ごめんね。なんか……あれかな?空想のお友達を作っちゃってた?」
桜子と夏菜が申し訳なさそうに謝ってくる。
今更一時期イジメられた事などどうでもいい。
じゃあユキちゃんは死んでいない?
そもそもユキちゃんは存在していない?
ユキちゃんは僕が作り出した妄想の友達だったのだろうか?
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