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「アイ、なんでその人がいるの?アイ騙されてるよ。その人は結婚しているんだから…」
吉井さんは私の方をチラッと一度みたきり後はずっと相楽くんしか見ていなかった。
「私は晴海さんと離婚したわ。あなたが一番よく知ってるでしょ?」
吉井さんは私の言葉なんか聞こえないみたいに一方的に相楽くんに話しかけ続けた。
「アーイ、この帽子わかる?いつもアイが被ってた帽子。アイにすぐに見つけてもらえるように私ずっと被ってたんだよ?」
相楽くんは何か言おうとして、でも声にならないみたいだった。
「あ、このピアス。やっぱりアイの部屋にあったんだ!前に来た時外したままだったのね。」
彼女は私たちを押し除けて部屋へ進み座るとテーブルのピアスを手に取った。
鼻歌まじりにそのピアスを耳につけ始めた吉井さん。
「ゆう…俺たち、もう終わってるよね?」
相楽くんが絞り出すように言った。
彼女は一度止まったけど、今度は逆の耳にピアスをつけている。
「あの時、病院でもう会わないって言ったよね?ゆうもわかったって言ったはずだ。」
“ゆう”というのは吉井さんの名前なんだ。
ピアスをつけ終わった吉井さんは床に座ったまま、ため息をつき言った。
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