166人が本棚に入れています
本棚に追加
プライド
2人で私の部屋に戻る頃には日が陰りはじめていた。
「また由貴さんの部屋に来れた。」
にこっと笑った相楽くん。
でもその表情はどこか寂しげで、疲れているように見えた。
決意してあの部屋に行ったとはいえ、やっぱり辛かっただろうし無理してたと思う。
彼女にも再会して、二重にキツかったはずだ。
吉井さんの態度は頑なで一方的で、ずっとあんな風だったのかと同情せずに居られなかった。
「相楽くん!ご飯食べよう!何食べたい?私が作るから!」
私は敢えて明るく言った。
「由貴さん…作れるの?」
「失礼ね!私、料理教室に通ってたのよ?」
相楽くんはクスクス笑って言った。
「心配だから、俺も一緒につくるね。」
2人で一緒にコロッケを作った。
私が作ったのだけ何故か爆ぜたり崩れたり…その度相楽くんは遠慮なく笑っていた。
「もう!笑いすぎよ!コロッケは料理教室でも作ったことがあったのに…」
「ごめん…でも、味はきっと美味しいよ。」
言いながら相楽くんはクスクスと笑っていた。
私のコロッケは不格好で油っぽかったけど相楽くんが笑ってくれてよかった。
相楽くんが作った形のいいコロッケと私の作ったコロッケを食べて、二人抱き合って寝た。
今日はただくっついて寄り添ってあげたかった。
そしてただ隣にいて欲しかった。私が相楽くんを必要としてることを感じて欲しかった。
互いの温もりを交換してそれだけで幸せで、
二人の呼吸が重なってそのまま眠りに落ちた。
相楽くんの心の傷が早く癒えますように。
そう祈りながら。
最初のコメントを投稿しよう!