168人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕にも君くらいの頃があったからわかる。
自分では大人になったつもりでもまだまだ幼くて未熟だ。先のことを考えるのは難しいし自分のことで精一杯だろ?」
「もうやめて!」
ただでさえ傷ついてる相楽くんをこれ以上否定してほしくなくて叫んだ。
晴海さんは私を一度見ると相楽くんに言った。
「今もこうして由貴さんに守られてる。
そんな君が由貴さんをどうして幸せにできるの?
君がもし、由貴さんを傷つけたら…」
「由貴さんを傷つけたのはあんただろ!」
聞いたことのない相楽くんの怒鳴り声。
相楽くんの顔は紅潮して本当に怒ってるんだとわかった。
晴海さんはポツリと呟いた。
「そうだね。」
そして私の方へ向き直り言った。
「由貴さん、確かに僕は君を傷つけて苦しめた。でも別れたのは君のためだ。君は僕といたら幸せにはなれなかった。できれば僕が幸せにしてあげたかったよ。でも無理だとわかったから別れたんだ。それだけはわかって欲しい。今も特別だから。由貴さんには自分を大切にして欲しいんだ。」
私は晴海さんの方を見ないまま呟いていた。
「もう…帰って。」
視界の隅で帰っていく晴海さんの後ろ姿が見えた。
その時に一瞬、コーヒーの匂いがした気がした。
玄関のドアが閉まる音がしてすぐに
私は相楽くんに抱きついた。
相楽くんの匂い。
とても安心した。
「相楽くん。ごめんね。」
「俺も…怒鳴っちゃった。ごめん。」
相楽くんもギュと私を抱きしめてくれた。
相楽くんは私のために怒ってくれたんだと思った。
あの時、一番苦しんでいた私を知っているのは彼だけだから。
最初のコメントを投稿しよう!