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好きよ
晴海さんに会った日から、相楽くんは少しずつ変わっていった。
数日後、家に帰るとスーツ姿の相楽くんがいて驚いた。
「由貴さんおかえり!」
「相楽くん、どうしたの?スーツなんて…」
「今日午前中にアパートへ戻って持ってきたんだ。他にも結構片付けたり処分して、だいぶ荷物が減ったよ。大家さんと解約と退去の話もできたし。」
ひとりでアパートへ行って辛くなかったのかな…
少し心配になった。
それにしても…
スーツ姿の相楽くん。まじまじと見てしまう。
普段はオーバーサイズな服装が多いから気づかないけどスーツになるとすごくスタイルがいいのがわかる。
手足が長くて、肩幅はあるのに腰は引き締まってる。
そんな私の視線に気づいた相楽くんは不安気に訊いてきた。
「…変かな?」
「変じゃない!すごくかっこいい。見惚れちゃってた…」
私がそう言うと相楽くんは珍しく恥ずかしそうにした。
「実は就活してるんだ。バルの仕事は結局バイトだし、正社員に空きはないから、オーナーに相談したら出入り業者の社長を紹介してくれて。イタリアのワインとか食品を輸入してる会社で、今日面接に行ってきたんだ。」
「…そうだったんだ。」
「俺、大学中退しちゃってるからさー。なかなか厳しくて。でもその会社に受かれば収入はかなり増えるし、夜や週末は由貴さんと一緒にいられるから。」
「相楽くん、受かるといいね。」
「ありがとう!」
スーツを着ていても相変わらずかわいい笑顔の相楽くん。
でも何故か私は喜べなかった。
相楽くんが私のために変わっていくことを何故か喜べなかった。
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