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『由貴さん、今どこにいるの?』
「◯◯の公園。」
『…すぐ行くよ。』
短い返事の後、電話は切れた。
敦子さんの勢いに押されて電話してしまったけど、私大丈夫かな。
相楽くんに会ったらまた辛くなるかもしれない。
吉井さんとはどうなったんだろう。
彼女は今どこにいるんだろう。
電話したらしたで今度はいろんな不安が押し寄せてくる。
今更何を言えばいいの?
私の一方的な思いで彼を拒絶し傷つけたのに。
やっぱり電話しないほうがよかったかも。
相楽くんだって今更って思ってるかも。
敦子さんが聞いたら怒りそうだけど、でも電話をしたことを早くも後悔し始めていた時、その声を聞いた。
「由貴さん」
顔を上げると相楽くんがいた。
その姿を見ただけで胸がきゅうっと締め付けられる。
さっきまでの迷いは一瞬で消し去られた。
「相楽くん…来てくれてありがとう。」
「うん」
相楽くんは微笑んで、でもその顔は寂しげだった。
「隣座ってもいい?」
私が頷き、少し横へずれると相楽くんは私の隣に座った。
彼の座った左側がふわっと暖かくなった気がした。
私の左半身が勝手に彼を求めて熱を持ったのかもしれない。
やっぱり、どうしようもなく彼が好きだ。
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