再会

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「相楽くん、私が電話した時どこにいたの?すごく早かったね。」 私は敢えて、本題から離れた話からした。 「実は、ちょうど最寄りの駅にいたんだ。今日部屋に戻ろうと思って。」 「…そう。すごい偶然…」 部屋って、半年帰っていないと言ったアパートだよね。 それってやっぱり、吉井さんが関係してる? 想いを伝えようと相楽くんを呼び出しておいて、やっぱり吉井さんの存在にたじろいだ。 つい無言になってしまう。 「由貴さんの話ってこれだよね。」 相楽くんはポケットからいくつか鍵のついたキーリングを取り出した。 その中の一つを外し、私に差し出す。 それは私が渡した合鍵だった。 相楽くんは私たちの関係を終わろうとしていた。 それはそうよね。 あの夜私が、もう無理だって言ったんだから。 差し出された鍵を受け取れば私たちは終わる。 終わってしまうんだ。 「由貴さん、なんで泣いてるの?」 相楽くんの声に我に返った。 私は無自覚に泣いていた。 「その鍵を…受け取りたくない。」 私は声が震えるのをなんとか堪え言った。 「私…自分でも勝手だって思うけどこれからも相楽くんと一緒にいたい。 やっぱり、相楽くんが好きだから。」 「由貴さん、いいの?後悔しない?」 私は何度も頷いた。 「相楽くんと離れる方が辛い。」 そう言った瞬間抱きしめられた。 「由貴さんってほんとひどい人だね。俺がどれだけ泣いたと思ってるの?」 「ごめんなさい。私…」 「いいよ。もう離れてあげないから。」
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