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「由貴さんに会って由貴さんを好きになって本当に幸せだったのに、彼女の執着を知ってまた少しずつトラウマが蘇ってきて、由貴さんに生理と言われて逃げてしまったんだ。あの夜のこと、本当に悪かったって思ってる。」
相楽くんは面目なさそうに言った。
私は首を横に振った。
「彼女はついに俺のバイト先を突き止めてやってきた。たまたま俺は出勤前だったけど、店長はその日の俺の退勤時間を教えてしまったと言ったから頼み込んでその日はそのまま帰らせてもらった。
でも、その夜に由貴さんの部屋のベランダから彼女がいるのが見えたんだ。」
それを聞いて思い出した。
相楽くんがバイトがなくなったと言って夕食を作って待っていてくれた日だと。
あの日相楽くんはタバコを吸いにベランダへ出たのにすぐに部屋へ戻ったんだった。
「俺は由貴さんは絶対に巻き込みたくなかったんだ。だから由貴さんより先に部屋を出て彼女とちゃんと話そうと決めた。でも朝にはもう彼女の姿はなくて安心してたんだ。」
それが、私が彼女と玄関前で鉢合わせた日…
彼女は最初から、今誰が相楽くんといるのかを探っていたのかも知れない。
「吉井さんが今どこにいるか知ってる?」
私の質問に相楽くんは首を横に振った。
「でももう逃げるつもりはない。ちゃんと話してわかってもらう。」
相楽くんは私の手を握って言った。
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