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「今日、その前にあのアパートに帰ってみようって決めたんだ。したら、同じ日に由貴さんが…
俺たちってやっぱり運命的な何かで結ばれてるよね。」
そう言って笑った彼は私を見た。
「うん。そうだね。」
私はそれから話を聞きながら、ずっと頭の中にあったことを言った。
「相楽くん、私もその部屋に連れて行って。」
相楽くんに辛いトラウマをもたらした部屋。
相楽くんと彼女が一緒の時間を過ごした部屋。
そんな場所辛いに決まってるのに私も行かなければと思った。
「…いいの?由貴さんだって…」
「大丈夫。一緒に行こう。それで一緒に乗り越えよう。」
私たちは手を繋ぎ歩き始めた。
相楽くんが半年避けて戻れなかった場所へ。
その先、私たちには明るい未来があると信じて。
「由貴さんもこの近くに住んでいたんだよね?」
歩きながら相楽くんに訊かれた。
「そう。さっきの公園前の道を真っ直ぐに行くとコーヒーショップがあるの知ってる?あそこは元夫の晴海さんのお店で私も手伝ったりしてたの。」
「そうだったんだ。行ったことはないけど前を通ったことはあるよ。いつもコーヒーのいい匂いがしてるなって思ってた。」
「…うん。実は今日行って来たの。辞めたバイトの人が生まれた赤ちゃんを連れて来てくれて、晴海さんにも引越し以来初めて会った。
辛くなるかなとも思ったけど、大丈夫だった。」
「…そっか。」
相楽くんはそう言って繋いだ私の手をぎゅっぎゅと2回、強く握った。
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