リアライズ22~Re:REAL~

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トモヤとラベンダーの髪色のリナに、CCでメールを送りつける。CCは宛先二名に同じ内容が伝わるし、送られた方の二人も互いにメールアドレスがわかる便利機能。 ケータイはマジで神、文明の利器万歳。 『貸しチャラにするからライブに来い、サクラの仕事。①知り合いじゃないふりをする②他に人が集まったら解散。日時→2003年◯月×日△時。バックレんなよ』 リナはやわな女だから〆られない。自分より弱い相手と喧嘩してもつまらないし。喧嘩出来る女子は大抵運動部のレギュラー。柔道部で県大会準決勝まで行った月の輪熊みたいな女子に固め技を決められたときは私もギブアップしたけどね。リナは、小柄で華奢。 トモヤにだけBCCで先に送っておいたメールは、『私とのタイマン勝負か路上ライブのサクラやるか、どっちか選べ』だった。 『リナと一緒にサクラやる。ていうか、リナにメール送らないで』 こんな素っ気ない内容だった。先に誤爆したふりでメールを送ってきたのはリナなのに。なんで私のメアド知ってるの?そこにはトモヤとのチュープリが添付されてた。 キスしてプリクラ取って、わざわざそれを写メで撮って送る。リナをぶん殴ってやりたいけど、一発で沈む奴を殴っても面白くない。トモヤもタイマンから逃げてサクラを選んだ。 振り上げた拳はどこにも振り下ろせなかった。 もう昔みたいに喧嘩もタイマンも出来ない。老けるってそういうことかも。今の私の手足はだれかと喧嘩して殴ったり蹴ったりするためにある訳じゃない。 ギターを弾いて、路上で歌うために立つ。 喧嘩した後の、拳が人の肌や筋肉を抉る感触は後味の良さと悪さ、両方がある。バカなことをした後悔と喧嘩に勝ったときの高揚感。 路上でもライブなら誰も傷つけない。サクラをやらせて浮気からの別れは貸し借りなし。今度の路上ライブでやる初オリジナル曲の練習もした。余計なことは考えない。仕事、ギター、歌の練習、今の私はそれだけ、それだけしかない。それでいいんだ。
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