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昼食の後もひたすらブルーベリーを摘んだ。慣れてくると摘むスピードも速くなっていく。 陽が傾くと、一気に涼しさが増す山の中腹。綺麗な空を見上げ一番星を見つけた。 ………和は? 綺麗な景色が一緒に見たくて、周りを見回すと遠くにいる和が俺に手を振っていた。 俺が振り返すと、空を指差す。指された方向を見るとさっき見つけた一番星。 ………気づいてたんだ もしかしたら、俺が気づくのを待ってたのかも知れない。 すると、ポケットに入れたスマホが震えた。 『一番星、綺麗だな』 『うん』 同じ景色を見ながらスマホで会話する俺達。一緒に感じる夏の景色。 小さいけど確かな幸せ……… 俺はそのままスマホで写真を撮ると、和に送った。 『来年も見に来たいね』 『うん』 未来の約束に心踊らせていると、遠くで叔父さんが「今日は終わりにしよう」って呼ぶ声が聞こえた。 もしかしたら、今日も和とお風呂かな……… そんな俺の期待も虚しく、今日は翔さんに「一緒に風呂に入ろう」と誘われてしまった。 和も「先に入っておいでよ」なんて言いながら圭さんと叔母さんの手伝いに行ってしまう。 ………仕方がない 俺は翔さんと風呂に入ることにした。 脱衣場で裸になって気付く、翔さんは男の俺でも惚れ惚れするような身体をしていた。 無駄のない身体は、ずっと地道に鍛えてる人のそれだ。 二人一緒に湯船に入って「はあー」って声が同時に出た。 「ブルーベリーの収穫って、以外に疲れるだろう?」 「はい、でも無心になって摘むのも悪くないですよね。山の空気も美味しいし」 「だよな。毎年、なんだかんだ都合をつけて手伝いに来たくなるのも、そのせいかな」 「でも、今年で最後なんですよね?」 「ああ、就職したら流石に無理だろう……ここで過ごす1ヶ月が楽しかったのにな」 「圭さんとも最後なんですね……」 「……………」 不意に返事が途切れ、横に座る翔さんの顔を見る。 「翔さん?」 「………あ……いや、そうか……圭とも最後なのか……」 「………まあ、でも連絡すれば、ここじゃなくても会えますしね」 「……………」 「……翔さん?」 「俺………圭の連絡先とか……知らないかも」 そう言った途端、湯船から慌てて出た翔さん。凄いスピードで身体を洗うと、風呂から出て行った。 俺も慌てて湯船から出ると、大急ぎで身体を洗って追いかけた。
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