12

1/1

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

12

「「え?」」 腕の中の和と、翔さんの声がハモる。 俺はそれを気にせず和の額にキスをした。 「俺達、恋人同士なんです」 「え?………だって……」 「男同士ですけど、俺達好きあってるんです……」 「……………」 俺の突然の告白に、腕の中で固まっている和。その首筋に鼻を寄せると、思い切り香りを吸い込んだ。 「………この香りで……気づいたんです」 和は俺のしていることの意味がやっと分かったようで、黙って腰に腕を回す。 「………香りで……」 「はい、愛しくて大切な香りです」 少しの間、俺の目をじっと見つめた翔さんは「ちょっと水飲んでくる」そう言って部屋を出ていった。 何かが変わればいい………… 「あのさ、俺まだ風呂に入ってないから」 翔さんが出ていった途端、身体を離そうとする和を引き留める。 「汗臭いから、離せって」 「やだ」 「やだじゃない!」 思い切り胸を押されて渋々離す。 「翔さん、圭さんの特別な香りを感じるんだ」 「そうだね」 「圭さんは……どうなんだろう」 「………きっと、感じてると思う」 「なんで、そう思うんだ?」 「……………和って、時々鈍感だよね」 俺の言葉に、怒ったように顔を膨らませた和。その顔が可愛くてまた抱き締めた。 「悪かったな、鈍感で」 「そこも可愛い」 「うるさい、離せ」 「………じゃあ、風呂に入ったら抱き締めてもいい?」 「もう、そういう問題じゃ……いいけど」 更に力を入れて抱き締めると、もう一度俺の腰に腕が回った。 「………翔さんと圭さん。上手くいくといいな」 小さく呟いた和が、愛おしい。 和も風呂に行ったあと、部屋に一人残された俺は、ベッドに横になった途端眠ってしまった。 昨日の寝不足と、暑い中での収穫に体力がもたなかった。 ふと暑さに目を覚ますと、愛しい香りがして驚いた。 暗い部屋の小さな灯りの中、俺の横で猫のように丸まって眠る和がいた。 ベッドに入ってくるなんて……… 約束を守って大胆な行動をしてくれた恋人を起こさないように胸に抱くと、直ぐに俺の身体に腕が巻き付いた。 俺の方が和を好きとか……なんか馬鹿みたいだ。和だってこんなに俺の事が……… 和の乱れた髪を撫でていると、俺もまた自然と眠くなる。 目蓋を閉じて思った…… 今日は、翔さんのいびきが聞こえない……
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加