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「ずいぶん大胆なんだな」 身体を揺らされ目を離すと、ベッドの横で仁王立ちする圭さん。 「もう朝食の時間だぞ」 「…………圭さん、俺達付き合ってるんです」 和を腕に抱いたまま言う。 「圭さんは薄々気付いてたでしょうけど………昨日、翔さんにも言いました」 「何でまた急に?………あいつ驚いてただろう………男同士でそういう関係なんて、きっと考えたこともないだろうから……」 圭さんの顔が切なく歪む。この人はもしかしたら、ずっと苦しい恋をしていたのかも知れない。 「さあ、食事にいくぞ。叔母さんを待たせたら悪い。それに……いちゃつくのは帰ってからにしてくれ」 そう言うと、圭さんは部屋を出ていってしまった。 「何のミッション遂行中なんだ?」 もぞもぞと動いた和が、俺の頬に手をあて言う。 「なんにも………ただ想いが叶うっていいよね」 そう返すと、和が軽くキスをくれた。 「夏希のそういうところ大好き」 …………ベッドで寄り添いながら、そんな破壊力のある笑顔でそういうこと言わないでくれ……… 俺はムラムラした気持ちを必死に抑え、和と朝食に向かった。 朝食中も、仕事が始まっても、どこかぎこちない翔さんと圭さん。 明日の朝にはここを出る俺達は、二人のこれからを見届けることは出来ないだろうけど………… 翔さんが時より、圭さんを見つめている。 圭さんはあえて、翔さんを見ないようにしているみたいに見える。 もしかしたら、圭さんは初めから諦めてるのかも知れない……… 男女の恋愛と違って、想った人に想われる可能性は遥かに低い。 でも、その想いが叶った時の幸福感は……… 俺は視線を和に移した。 気づけ………気づけ………和 頭の中で願う。 不意に顔を上げた和が、周りをキョロキョロと見る。俺の視線に気づくと、太陽よりも眩しい笑顔で俺に手を振る。 ほら………この幸福感 愛しい人から、自分に向けられた笑顔は最高だ。 翔さんを想う圭さんにも、この感じを……… 圭さんの恋が………実るといいな……… 和に手を振り返しながら、そう思った。
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