16人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
13
「ずいぶん大胆なんだな」
身体を揺らされ目を離すと、ベッドの横で仁王立ちする圭さん。
「もう朝食の時間だぞ」
「…………圭さん、俺達付き合ってるんです」
和を腕に抱いたまま言う。
「圭さんは薄々気付いてたでしょうけど………昨日、翔さんにも言いました」
「何でまた急に?………あいつ驚いてただろう………男同士でそういう関係なんて、きっと考えたこともないだろうから……」
圭さんの顔が切なく歪む。この人はもしかしたら、ずっと苦しい恋をしていたのかも知れない。
「さあ、食事にいくぞ。叔母さんを待たせたら悪い。それに……いちゃつくのは帰ってからにしてくれ」
そう言うと、圭さんは部屋を出ていってしまった。
「何のミッション遂行中なんだ?」
もぞもぞと動いた和が、俺の頬に手をあて言う。
「なんにも………ただ想いが叶うっていいよね」
そう返すと、和が軽くキスをくれた。
「夏希のそういうところ大好き」
…………ベッドで寄り添いながら、そんな破壊力のある笑顔でそういうこと言わないでくれ………
俺はムラムラした気持ちを必死に抑え、和と朝食に向かった。
朝食中も、仕事が始まっても、どこかぎこちない翔さんと圭さん。
明日の朝にはここを出る俺達は、二人のこれからを見届けることは出来ないだろうけど…………
翔さんが時より、圭さんを見つめている。
圭さんはあえて、翔さんを見ないようにしているみたいに見える。
もしかしたら、圭さんは初めから諦めてるのかも知れない………
男女の恋愛と違って、想った人に想われる可能性は遥かに低い。
でも、その想いが叶った時の幸福感は………
俺は視線を和に移した。
気づけ………気づけ………和
頭の中で願う。
不意に顔を上げた和が、周りをキョロキョロと見る。俺の視線に気づくと、太陽よりも眩しい笑顔で俺に手を振る。
ほら………この幸福感
愛しい人から、自分に向けられた笑顔は最高だ。
翔さんを想う圭さんにも、この感じを………
圭さんの恋が………実るといいな………
和に手を振り返しながら、そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!