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俺達がここで過ごす最後の夜。 「花火でもやらないか?」 翔さんに誘われ、俺達三人は外に出た。 いつの間に用意されたのか、外には薪を積んだ焚き火がもう既に燃えていて、その周りにはアウトドアチェアが4つ並んでいる。 小さなテーブルには花火と、隣にちゃんと水の入ったバケツも置いてある。 「キャンプファイアみたいだ」 和が目を輝かせて、俺の手を引いた。 さっそく花火を物色しながら「どれからやりますか?」なんて翔さんに聞いてる。 たぶん……口数の少ない圭さんを思って、この場を盛り上げようとしてるんだ。 俺は素直にそれにのって、花火を始めた。 和が火のついた花火を、圭さんにも手渡す。 その花火を見ながら、少しずつ表情が解れていく圭さん。 俺と翔さんで手持ちの打ち上げ花火を上げる頃には、笑顔が見られるようになっていた。 「何か飲み物持ってくる」 翔さんが家の中に行くと、三人で線香花火に火をつけた。 「俺も………二人と一緒に帰ろうかな」 「えっ……どうしてですか?」 「……まあ……いろいろな」 そう言ったまま、小さな花火をじっと見つめる圭さん。 炎に照らされた横顔が、綺麗なのに寂しそうで苦しくなる。 花火も終わり焚き火の周りに座る。翔さんが持ってきたビールで乾杯をして一口飲むと、急に翔さんが立ち上がった。 「……えーと、俺の名前は藤岡 翔。光陵大学の4年。地元は神奈川で今は都内で独り暮らしをしている」 「おい、今さら自己紹介か?二人は明日帰るんだぞ」 圭さんが翔さんの話を遮る。 「俺は、二人にしてるんじゃない。圭、お前に話してるんだ」 「はあ?」 「いいから聞けって。就職は、去年の冬にインターンをしてた会社に内定が決まってる。だから、そのまま都内で暮らすつもりだ。それから……彼女は、大学の一年の春に告白されて付き合った子がいた。夏にここに来るって言って、1ヶ月会わなかったら振られたけど………二年の冬にも、なんとなく一緒にいる子がいたけど、やっぱり夏は会えなくて疎遠になった」 「……………」 「だから、今は彼女はいない。高校の時は………話す程のことはないか」 「……………お前、何が言いたいんだ?」 「夏は、どうしてもここに来たかった。その理由が何なのか考えたこともなかった。仕事が好きなのと、山の空気が好きだからと思ってたから」 「……………」 「夏希くんに………圭さんとも最後ですねって言われて、お前の連絡先を知らないことにめちゃくちゃ焦った……」 翔さんの勢いが凄くて、隣で和がビールの缶を両手で持ったまま動きを止めてる。 俺は握りしめた手に思いを込める。 頑張れ………
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